今年に入り食品や電力、ガスなどが値上がりしています。小麦は9割以上輸入していますので、うどんやパスタ、お菓子なども1割ほど値上げされましたね。20年ぶりの円安のため、輸入のコストが高くなっています。
万が一、経済危機が来ると仮定した場合、とても参考になる国があります。それはキューバです。キューバは食糧やエネルギーなどを同じ社会主義国のソビエト連邦(当時)から輸入していましたが、1991年にソビエト連邦が崩壊してしまったため、食糧などを輸入することができなくなってしまったのです。食糧だけでなく農薬や化学肥料もソ連に頼っていたので、それらもストップしてしまいました。
キューバは日本や世界各国と同じように、農薬と化学肥料を使用する慣行農業がメインの国でしたので、国内の農業が停止してしまうという危機的な状況に陥ってしまったのです。しかも当時のキューバの食糧自給率は今の日本とほぼ同じくらいでしたので、一気に食糧難になってしまいました。その影響で多くの国民は栄養失調に陥ってしまったそうです。
自給しようにも農薬も化学肥料も無いわけですので、農業自体がストップしてしまいました。農薬と化学肥料の農法が主流だったことが、状況を悪化させてしまったのです。万事休すです。
では一体どのようにして危機を乗り越えたのでしょうか?その危機を救ったのが、街中で行われる無農薬・有機肥料の農法でした。もはや農薬は輸入できないので、無農薬で栽培するしかありません。また、化学肥料も輸入できないのですから、有機肥料しかないのです。選択肢もないまま、無農薬・有機肥料栽培を国民総出で実践するしかありませんでした。食べるものがないのですから、弁護士も会計士も皆農作業を行ったそうです。
地方には畑があるので、まだよかったのですが、首都のハバナには農地はほとんどありません。地方に疎開する人もいたそうですが、移転することができないハバナ市民は、都会で野菜を栽培するしかなかったのです。正に「必要は発明の母」で、そこで考え出されたのが、「オルガノポニコ」という方法です。市内の駐車場のコンクリートの上や屋上など、どこにでも畑を作ったそうです。先ずコンクリートの上にレンガや木などで囲いを作ります。その囲いの中に、有機肥料を混ぜた土を入れ、畑にしたというのです。都会のコンクリートの上にいきなり畑が出現したことになります。日本でもビルの屋上で家庭菜園を実現しているケースが多くなりましたが、それを少し簡単にしたような方法です。全く土がない街中でも、半日もあれば立派な畑が完成するそうです。こうしてハバナ市の至るところに畑ができていきました。また、アパートや一戸建てのベランダでは、多くの人々がプランターで栽培を行っているそうです。
プランターで栽培しても、少ない量しか収穫できないだろうと思うかも知れませんが、10個、20個と並べられたプランターであれば、かなりの収穫が見込めます。スター農園では、平均で一株のナスから50個くらい収穫できます。プランターで栽培した場合では50個はムリとしても、20個くらいは採れますので、かなり足しになると思います。また、小松菜やほうれん草などの葉物は、根っこから抜いてしまうのではなく、外側の葉からハサミなどで切って収穫すれば、ドンドン葉っぱが出てきますので、なかりの期間、収穫をし続けることが可能です。
こうしてほとんど農業などを行っていなかった人口約200万人のハバナ市は、10年かけて、野菜に関してはほぼ100%の自給が達成されたそうです。しかも無農薬・無化学肥料栽培になります。日本では農薬と化学肥料を使用して栽培するケースが99.8%ですから、いかにキューバが素晴らしいかが分ります。自分たちの手で、安心・安全な野菜を育てたのです。
ひふみ農園では農薬や化学肥料を使わず、野菜やお米を栽培しているので、農薬や化学肥料が輸入できない状況になったとしても、影響はありません。野菜や稲は本来とても強いので、農薬や肥料が無くても育つのです。庭にある柿やビワに農薬や化学肥料を使う人はほとんどいませんが、毎年立派に実ります。植物も人間も生まれながらにして頑強にできているのですが、それを疎外しているのが人間の意識だと思います。